craft- happy oceanのものづくり -

今作は、皆川明氏が色鉛筆で描いた海の世界を、「手刺」(ハンドタフテッド)で織り上げています。手描きによる色と線のかすれ、ぶれ、ふぞろい。人の手元から生まれる「ゆらぎ」を、ゆらめくまま、いかに自然な形で表現するか。今作で取り入れた様々な技術的挑戦が、新しいじゅうたんとして実りました。

1.かすり染め

色鉛筆で描かれた原画のかすれや濃淡を、自然に表現すべく導入した染色方法です。

一度淡く全体を染めた糸を、さらに複数の色を重ねて染色することで、柔らかなグラデーションを生み出しています。ムラなく糸を染めるには、染料につける深さ、時間、温度管理など、染色工程での繊細な調整が必要です。

かすり染めをじゅうたんの糸に応用することは、1977年に自社で一度挑戦していましたが、再現性が低いことから断念。今回、約半世紀を経て再挑戦し、実用化に漕ぎ着けました。

2.チップシャー

手描きのゆらいだ線、そのニュアンスと印象をより引き出すために取り入れた織りと仕上げの技術です。

手刺工程において、織り込む糸に毛糸の重しを乗せ、糸を打ち込んでいく工具(フックガン)に負荷を与えることで、線となるループ織りがじゅうたんの表面に深く潜る箇所、浅く潜る箇所を不規則につくります。

その後、全体を表面仕上げする過程で、浅いループは表面が削られて滑らかに、深いループは潜ったまま、1本の線の中に異なるテクスチャと肌触りが生まれます。人の手で描かれたような、有機的な線の表現になりました。

3.分析と設計

上記の染色と織りを含む、今作の全技術要素をじゅうたんの図面として整理し、社内のデザイン室が分析・設計します。

原画に無作為に引かれた線、描かれた色のかすれを表現するには、織りと色をどのように配置、構築すればよいのか。作為的な気配を避け、何気ない線と色を何気ないまま表現するには、非常に緻密な分析が必要でした。

全14色の糸を組み合わせ、何度も重ねた数ミリ単位での設計図の描き分けが、『happy ocean』の世界を暮らしの場に具現化しました。

[ お手入れとクリーニング ]

上質な羊毛、堅牢な染色、緻密な織り。この3点を揃えたじゅうたんは、暮らしの中で触れられ、月日を重ねていくことで、艶やかに表情と肌触りが変化していきます。

普段のお手入れは、週に数回掃除機をかけること。また、5年に一度、工房でメンテナンス・クリーニングを実施するのをおすすめしています。

工房でのアフターケアは、専⾨の職⼈がじゅうたんを⽔槽に浸して丸洗いし、再び表⾯を丁寧に仕上げます。お手入れ後も、製品を安⼼してご愛用いただけます。

ぜひ本製品を末長くご愛用いただき、特別な1枚へお育ていただけますと幸いです。

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